2017.06.29
投手に重要な肩甲骨の動きに関与する小胸筋のストレッチ方法と注意点
2017.06.14
「野球肩」「野球肘」と呼ばれる投球障害は、重症化してしまうと長期離脱しなければならない野球選手にとって絶対になりたくない運動障害です。
痛みや違和感が続くと、無意識に痛みをかばうようになり、投球フォーム不良がおこったり、投げるのが怖くなって全力投球ができなくなる選手も多いです。
治療や手術が必要となるケースでは、痛みを取るだけでなく、投球フォームの修正も行わなければならなくなるため、改善するために多くの時間がかかってしまいます。
そのため、肩や肘に痛みや違和感を感じたときに、早い段階で対処するのが理想です。
今回は、投球動作によって引き起こる肩関節外旋筋群(肩のインナーマッスルである棘下筋や小円筋)、三角筋後部線維、後方関節包など肩関節後方のタイトネス(柔軟性の低下)を改善する3つのストレッチ方法をご紹介します。
投球・送球動作では、ボールリリース後、肩が遠心性に引っ張られる(体重の約 0.8倍~1.5 倍の牽引力が掛かると言われています)ことで、肩後方に負荷がかかり、その結果、筋緊張(タイトネス)がおこり、肩関節の内旋可動域が制限される要因となります。
投げるたび、肩後方に大きなストレスが生じるということは、オーバーユース(投げすぎ)・投球フォーム不良に限らず、何もしなければすべての選手に肩後方の柔軟性が低下する可能性があるということです。
teamLab Body-3D Motion Human Anatomyより引用改変
投球・送球時に、肩の土台となっている肩甲骨は「上方回旋、後傾、外旋」と3軸に動きますが、肩後方のタイトネスにより肩関節内旋可動域が制限されると、投球時に肩甲骨の前傾が増加し、肩甲骨の運動異常・位置異常の要因となります。
近年、肩甲骨の運動異常・位置異常は、肩関節の運動機能を悪化させる要因として注目されており、野球肩をはじめとした投球障害や投球フォーム不良につながる可能性があります。
投球障害、投球フォーム不良を未然に防ぐためには、毎日、肩後方のストレッチを行い、筋緊張を取り除いていくことが重要なのです。
肩関節の内旋可動域制限に対するストレッチの方法は、内旋方向への【スリーパーストレッチ】と水平内転方向への【クロスボディストレッチ】が推奨されています。
スリーパーストレッチは棘下筋に、クロスボディストレッチは小円筋と三角筋後部にストレッチ効果が得られやすいという知見のもと、ヘルスラボスポーツでは、スリーパーストレッチ1種類とクロスボディーストレッチを改良した2種類、計3種類の方法を選手に提供しています。
頭を高い位置で固定するために使用しますので、ちょうど良い枕がない場合、本を重ねて枕代わりにするなど試してみてください!
柔らかい枕では、頭が沈んでしまいますので、固めの枕推奨!
投球側の肩(ストレッチする側)を下にしてまっすぐ横向きに寝て、腕を肩の高さに合わせて伸ばします。
頭が落ちないように必ず枕などで支えてください。
肘を90度に曲げ、前腕を立たせます。
ゆっくり内側に倒していきます。
内側に行かなくなったところで、もう一方の手を乗せゆっくりと床に倒していきます。
倒せる限界の位置で30秒キープします。
強く押す必要はありません。無理のない範囲で実施してください。
上から見ると身体は床に対して垂直です。
肩の後ろや肩甲骨付近にジワっと痛みが出たら伸びている証拠です。
肩の前に痛みが出る場合、腕を下に下げて、ストレッチを行ってください。
それでも痛みが出るようなら、すぐに中止してください!
柔らかい:手のひらが床につく
普通:指先がつく
硬い:指先がつかない
指先がつかない選手は、危険信号!
投球側を下にして腕を肩まで上げた状態で横に寝ます。
頭が落ちないように必ず枕などで支えてください。
もう一方の手で、投球側の曲げた肘を外側から持ちます。
その状態で、垂直に引っ張り肩甲骨を伸ばします。腕が顎下に付くように伸ばしてください。
投球側を下にして腕を肩まで上げた状態で横に寝ます。
頭が落ちないように必ず枕などで支えてください。
もう一方の手で、投球側の曲げた肘を外側から持ちます。
その状態で、斜め上に引っ張り肩甲骨を伸ばします。腕が鼻に付くように伸ばしてください。
枕がなくて頭が落ちている。
身体が背中側に倒れる。
正しいフォームを意識して行いましょう。
頻度:毎日30秒3セット以上。
実施するタイミング:練習前は避け、練習後に行ってください。
通常、肩後方のストレッチは練習後にいますが、変化を実感するために、スリーパーストレッチを練習前後に行い、可動域を比較してみてください。
練習後は、硬くなっているのが実感できると思います。
また、投球腕と非投球腕の可動域を比較して、投球腕の方が10度以上硬い場合、すでに機能低下がおきている可能性あるので、投球障害予防のためにも今日から始めることをオススメします!
肩後方タイトネス以外にも肩甲骨の運動異常・位置異常に関わる要因があります。
以下コラムを参考にトレーニングやストレッチをしてください。
肩甲骨の運動異常・位置異常に関わる肩甲骨周囲筋の筋力低下を防ぐトレーニング方法はこちら
投球時に肩甲骨を安定させる前鋸筋の役割と2つのトレーニング方法
投球時に肩甲骨を安定させる僧帽筋下部繊維の役割とトレーニング方法
山内昌也(Masaya Yamauchi)
柔道整復師。1991年生まれ、沖縄県出身。専門分野は、野球選手の投球障害はじめとしたコンディショニングと投球動作・打撃動作の分析とトレーニング指導。自身の経験値とテクノロジーを活用したデータ分析で、選手のトータルサポートを行う。
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